セッションでクリスマス・ソングを演奏しよう!『黒本』収録曲編
- 2018.12.10
- セッション入門ガイド
12月に入り、街中ではクリスマス・ソングを耳にすることも増えてきました。そんな中、ジャムセッションに興味がある皆さんはちょっと気になったりするのではないでしょうか。そう、「セッションでクリスマス・ソングをすることもあるのか?」ということを。もちろんセッションでもクリスマス・ソングは演奏されますよ。そこで今回は、ジャズのセッションでよくコールされるクリスマス・ソングをご紹介してゆきたいと思います。セッションでのクリスマス・ソングということですから、まずは『ジャズ・スタンダード・バイブル』(いわゆる『黒本』)に収録されている中から数曲紹介します。
参考:『ジャズ・スタンダード・バイブル』
The Christmas Song(ザ・クリスマス・ソング)
ジャズでクリスマス・ソングといえば真っ先にこの曲が思い浮かぶ方も多いのではないでしょうか。その曲名が表すように、まさにクリスマス・ソングの代表格、「The Christmas Song」! 『黒本』では作曲者が「TRADITIONAL」、つまり作者が不明の伝統的な曲であるとされていますが、メル・トーメ(Mel Torme)とロバート・ウェルズ(Robert Wells)の作曲であるとすることの方が多いのではないかと思います。メル・トーメ自身の歌唱によるものの他に、ナット・キング・コール(Nat King Cole)が歌うバージョンも有名ですね。クリスマス・シーズンになるとカフェ等で流れていることも多いので、曲名を知らない方でも耳にすれば分かる曲ではないでしょうか。インストとしても多くのミュージシャンが演奏しています。
参考:『Amazon | Christmas Songs | Mel Torme | イージーリスニング | 音楽』
参考:『Amazon | メリー・クリスマス | ナット・キング・コール | クリスマス | 音楽』
セッションで演奏するにあたってですが、ジャズを演奏する人達の間での知名度は抜群ですので他の参加者が知っているかどうかを心配する必要はまず無いでしょう。キーも『黒本』ではE♭メジャーとなっていますので、ジャズ・ミュージシャンには親しみやすいキーです。ただ、一般的にはバラードで演奏される曲ですので、みんなで激しく盛り上がるには不向きかもしれません。でも、バラードでしなくてもテンポを上げてバップ風で演奏したり、あるいはイーブンの8ビートで演奏するのも——初心者向けセッションでは難しいかもしれませんが——面白いかもしれません。初心者の方にはコード・チェンジの頻度が多いのでちょっと難しく感じるかもしれませんが、少なくともバラードでこの曲を演奏できるようにしておいて損はないでしょう。
White Christmas(ホワイト・クリスマス)
お次はアーヴィング・バーリン(Irving Berlin)作詞・作曲による「White Christmas」です。これは世界で最も売れたシングル曲としても有名ですね。ビング・クロスビー(Bing Crosby)が歌うオリジナル・バージョンを始め、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)ら多くの歌手が歌い、そしてやはり器楽奏者達もこの曲を演奏してきています。ジャズが好きな人以外でもよく知っているジャズ・クリスマス・ソングとしてはこれの右に出る曲は無いと言ってもよいのではないでしょうか。
参考:『Amazon | White Christmas | Bing Crosby | クリスマス | 音楽』
参考:『Amazon | クリスマス・アルバム | フランク・シナトラ | クリスマス | 音楽』
『黒本』でのキーはCメジャー、コード進行も非常に分かりやすくシンプルですので、初心者の方がセッションでクリスマス・ソングに挑戦するにはうってつけの曲だと思います。セッション参加者の間での知名度も申し分ありません。曲調としては、バラードかミディアム・テンポのスウィングで演奏することが多いでしょう。バラードでやるのはまだ自信が無いという初心者の方も、テンポ♩=120くらいのスウィングでしたら気軽にチャレンジできそうです。この時期に是非レパートリーに入れておきましょう。
A Child Is Born(ア・チャイルド・イズ・ボーン)
続いて紹介するのは、サド・ジョーンズ(Thad Jones)の筆による「A Child Is Born」。この曲は先に触れた2曲に比べると知名度はぐっと落ちてしまうかもしれませんが、その分とりあげると(いい意味で)「おっ!」と思われる曲です。ビル・エヴァンスやケニー・バレルらによる名演も聴いておきたいところです。
参考:『Amazon | Consummation | Thad Jones, Mel Lewis | モダンジャズ | 音楽』
参考:『Amazon | Quintessence | Bill Evans | モダンジャズ | 音楽 – アマゾン』
参考:『Amazon | God Bless the Child | Kenny Burrell | モダンジャズ | 音楽』
『黒本』のキーはB♭メジャーですのでキー的には難しくはないでしょう。ただ、3拍子の曲ですのでアドリブの際のフレージング等は慣れていないと少し難しいかもしれませんが、これを機会にワルツ曲の練習をしてみるのもよいでしょう。コード・チェンジも終わりまでほぼずっと1小節に1回のペースですし、aug7コードやsus4コードといったちょっと変わったコードやG♭Δ7のような♭がいっぱいで尻込みする構成音のコードも出てはきますがその回数は少ないですので、初心者の方が少し背伸びをして練習するにはちょうどいいと思います。メロディーはとてもシンプルで、メロディー・フェイクの練習にも向いてます。構成が若干変わっていて、『黒本』にも脚注が書かれてありますが、1コーラスを32小節とする場合と30小節とする場合があります。セッションでこの曲をする時は、小節数をどのようにするかを演奏前に共演者と話し合っておいた方がよいでしょう。
まとめ
今回はセッションでよく演奏されるクリスマス・ソングの中から、『黒本』に収録されているものをご紹介しました。これらの曲はこの時期を逸したらなかなか演奏する機会がありませんので、是非とも今チャレンジしてみるとよいでしょう。(もちろん真夏にクリスマス・ソングを演奏するのも、それはそれで面白いですが(笑)。)
次回「セッションでクリスマス・ソングを演奏しよう! ——『黒本』未収録曲編」は、『黒本』には収録されてはいないけれどもジャズでよく演奏されるクリスマス・ソングをとりあげてみようと思いますのでお楽しみに!
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