【用語解説】テーマ

【用語解説】テーマ

テーマ【テーマ】[名詞]

曲のメロディー、もしくはそのメロディーが演奏・歌唱されるコーラスのこと。
次の曲ではベースが―を演奏してください」「ピアノ・ソロの後で―に戻りましょう

解説

曲をジャズの様式で演奏する場合、その曲の作曲者が書いた通りのメロディーを演奏者が演奏することは少なく、一般的には多少の差はあれども変奏の要素が含まれる。特に各奏者のソロ・パートではその奏者がアドリブで演奏するため、その曲本来のメロディーがそのまま聞こえるような演奏がされることは少ない。しかし、大多数のジャズ演奏の曲の(イントロに続く)最初のコーラスと最後のコーラスではその曲の本来のメロディーが聴衆に聞きとれるような形で演奏される。このメロディー、およびそれが奏される最初と最後のコーラスの事をテーマと呼ぶ。

テーマのメロディー・フェイク

ただ、「その曲の本来のメロディーが聴衆に聞きとれる形」といってもその幅は広く、ほぼ原曲通りに演奏される場合もあれば、原曲のメロディーを聞きとることがとても難しいこともある。これは、ジャズでは奏者がメロディーに変形を加えた形で演奏するメロディー・フェイクという手法が一般的で、その変形の度合いは奏者によって、あるいは同じ奏者であってもその時々によって異なるからである。従って、かなり変形されたメロディーであれば、ジャズを聴きなれない聴者にとってはそれがテーマであると認識することが非常に難しい場合もあり得るのである。

曲の構成とテーマ

上述のようにテーマは曲の最初と最後の曲で演奏されるのが一般的であるが、あえてそのような構成をとらないこともある。テーマを最初に演奏せずいきなりアドリブ・ソロから始まる構成では聴者に普通とは一味違った印象を与えることができるため、ライブや録音でそういった構成が用いられることもある。

一方、一曲の中でアドリブ・ソロが全く無い、あるいはほとんど無い演奏、つまり(ほぼ)テーマだけの演奏というのもあり得る。それはボーカル曲やバラードでは特にしばしば見られる。そのような演奏でわずかに(例えば2分の1コーラス、あるいはほんの数小節)アドリブ・ソロが挿入される場合、それはソロというよりも間奏としての役割が強いことが多い。

テーマを誰が演奏するか

テーマ・メロディーを演奏するのはヴォーカルやフロント楽器(サックスやトランペット等)であることが多いが、ギターやピアノ、あるいは稀にベース等が演奏することもある。ジャムセッションの際には、その曲をリクエストした人がテーマを演奏することが多い。

フロント楽器が複数いる場合では、その内の一人だけがテーマを奏することもあれば、複数人でテーマを奏することもある。後者のケースでは、全員がユニゾンでテーマを演奏する場合や、主に一人がテーマを演奏する横で別の者がハモりやオカズを入れる場合や、一人ずつがセクションごと(例えば1コーラスの前半と後半や、あるいはブリッジとそれ以外のセクション)で交代してテーマを演奏する場合等がある。これらのいずれのやり方をとるかについては、演奏前に話し合うこともあれば、演奏する中で(アイ・コンタクト等を用いたり共演者の音を聴いたりしつつも)各自が自由に判断して行うこともある。

「アタマに戻る」

ひと通りアドリブ・ソロや4バース等をした後、一般的にはその曲の最後のコーラスとしてテーマを演奏することになる。この、再びテーマに戻ることを「アタマに戻る」と言う。文字通りテーマ・メロディーの先頭に戻るという意味であり、例えば最後のテーマをサビ戻りとする場合は「アタマに戻る」とはあまり言わない。アタマに戻ることを共演者に伝えるジェスチャーとしては、自らの頭部に手を触れるというものがある。アドリブ・ソロや4バース等のコーラスの終わりの方で他の共演者の方を見ながら頭に手をやれば、その直後のコーラスはテーマ演奏するつもりであるということを皆に伝えることができる。

英語における「テーマ」

なお、この「テーマ」という語は英語の“theme”に由来すると思われるが、ここで言う「テーマ」を指す英語としては“head”等が使われる。headは特にテーマのコーラスという意味合いが強く、テーマ・メロディーそのものを指す場合には単に“melody”と言えばよい。
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