【用語解説】オブリ(obbligato)
- 2018.12.28
- 用語解説
オブリ【obbligato】[名詞]
ヴォーカリストやフロント奏者が奏する主たるメロディーと同時もしくはその直後に挿入される、主メロディーの引き立て役となる旋律。「オブリガート」の略。「オカズ」や「合いの手」とも。
「サックスは―を入れてください」「さっきの曲は―がヴォーカルを上手く引き立てていましたね」
解説
ジャズで演奏されるスタンダード曲の多くでは、そのメロディーが最初から最後までずっと単調なリズムであるということ(例えば最初から最後まで全て八分音符が続いて休符が一つも無い、等)はほとんど無い。大抵は1~数小節の長さを持つフレーズが複数連なることによって1曲の歌をなしている。おのおののフレーズとフレーズの間に休符が入れられていることもあれば、あるいは一つのフレーズの最後の音が長く伸ばす音であることもある。いずれの場合でも、そのような休符や長く伸ばす音(白玉)が存在することによって、フレーズはそこまでが一つのフレーズであるということが分かりやすくなっている。ただ、この休符や長く伸ばす音が続いている間にも全ての伴奏者がそれ以外の部分と違いのない調子で演奏を続けていると、少々間が空いた感じがすることもある。もちろん意図的にそのような間を空けたままにしておくことも音楽的に意義のあるな選択肢の一つではある。しかし、このテーマ・メロディーのフレーズとフレーズの間に伴奏者が旋律を入れることで埋める場合も多く、そのような旋律をオブリと呼ぶ。
オブリを担当する楽器パート
ヴォーカルがテーマを歌う時は特にオブリが入れられることが多い。その場合、サックスやトランペット等の管楽器がいればそれらがオブリを入れ、管楽器がいなければピアノやギター等がコードも弾きつつオブリも入れる。管楽器がいる場合でもピアノやギターがオブリを入れることもあり、ピアノやギターの方が管楽器よりも積極的にオブリを入れることもあれば、管楽器とピアノやギターがその場の判断で上手く分業しながらオブリを入れることもある。実際にどうするかは、曲調やヴォーカリストの意向を元にして演奏前に話し合ったり、あるいは演奏中に即興的に判断したりする。
ヴォーカルは入らず管楽器等のフロント楽器がテーマを奏する場合は、ピアノやギターがコードによる伴奏とオブリを兼任することが多い。ただ、フロント奏者が複数(二管、三管等)いて、フロント奏者同士で主旋律とオブリを分け合うこともある。
ドラムがフレーズとフレーズの間を埋めようとすることもあり、ドラムによるそれは「フィル・イン(fill in)」(「フィル」と略す場合もある)とも呼ばれる。ドラムがフィル・インを入れるのは特に楽節やコーラスの変わり目に多い。ドラム以外の楽器によるオブリをフィル・イン と呼ぶこともある。
オブリの入れ方
オブリはあくまで主となるテーマ・メロディー(主旋律)の引き立て役であり、オブリがテーマ・メロディー以上に目立ってしまってはオブリらしくなくなってしまう。オブリは主役である主旋律の邪魔にならないようにしなければならない。目立ちすぎたり邪魔になったりしないためには、オブリとなるフレーズの音量、ハーモニー、長さ、音数等に注意を払わなければならない。あまり大きい音でオブリを入れすぎると聴いている人は主旋律よりもそちらに耳が傾いてしまう。ハーモニー的には一般的にはコードに沿った不協和音の少ないものの方が悪目立ちはしないだろう。コードに沿ったスケールの音によるオブリでも、テンションの入れ方によっては思っていた以上に目立ってしまうこともあるので注意が必要だ。ガイド・トーン・ラインを意識したフレーズにすると綺麗なオブリになりやすい。オブリのフレーズの長さに関しては、主旋律が白玉や休符となっているところを中心としてその前後のメロディーに少し重なるくらいの長さのフレーズをオブリとして入れることが多い。ただし、より長いフレーズを主旋律にわざと重ねてゆくようにすることもある。オブリの音数については、少ない音数でゆったりと入れても良いし、逆にたくさんの音符を連ねることで躍動的にすることもあるが、オブリを入れ慣れない人は必要以上に多くの音数を入れてしまう傾向もよく見られるので、オブリは心持ち少なめの音数で入れてみた方が上手くいくかもしれない。音数に限らず長さや音量等についても言えることだが、オブリに関してはやり過ぎることは良い結果を生まない場合が多いだろう。
上手いオブリとは
以上の点に注意すればテーマ・メロディーを引き立てるオブリが入れられるだろうが、あえてこれらの逆の選択をすることでよりアグレッシブで効果的なオブリができる可能性ももちろんある。一流の奏者だとオブリなのにサックスでかなり吹きまくってもうるさく感じなかったりもするのである。なぜそんなことができるのかを考えながら色々な人のオブリを研究してみると良いだろう。上手なオブリをする人に共通して言えることが一つあるとすれば、演奏している音楽全体を見ることができているということかもしれない。全体をしっかりと捉えた上で結果的に必要なオブリだけを個々の箇所に入れることができれば、それは非常に効果的なオブリとなることが多い。先に挙げた注意点の数々はどちらかというと微視的なものであるが、それらを頭の片隅に置きながらも、より巨視的に1コーラス、そして曲全体を考えてオブリを入れるようにしたいものである。
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