セッションでクリスマス・ソングを演奏しよう!『黒本』未収録曲編
- 2018.12.12
- セッション入門ガイド
前回「セッションでクリスマス・ソングを演奏しよう!『黒本』収録曲編」はジャズのジャムセッションでよくコールされるクリスマス・ソングとして、『ジャズ・スタンダード・バイブル』(『黒本』)に収録されている3曲(『The Christmas Song(ザ・クリスマス・ソング)』、『White Christmas(ホワイト・クリスマス)』、『A Child Is Born(ア・チャイルド・イズ・ボーン)』)をご紹介しました。『黒本』の目次を眺めてみたらお分かりになるかと思いますが、実は『黒本』にはそれほど多くの多くのクリスマス・ソングが収録されているわけではありません。
参考:『ジャズ・スタンダード・バイブル』
だからと言ってセッションではそれ以外のクリスマス・ソングが演奏されないかというと、そうでもないのです。セッションで(あるいはそれ以外の演奏で)ジャズの形式で演奏される曲を色々聴いたことがあるという方も多いでしょう。『黒本』に載っていないことからセッションでコールされる頻度は前回ご紹介した曲よりは落ちますが、それでもセッションで演奏しうる曲を今回はとりあげます。
Frosty the Snowman(フロスティ・ザ・スノーマン)
これは1950年に作られた曲ですが、元々はジャズというよりポップスの曲ですね。ジーン・オートリー(Gene Autry)の歌唱によるものがオリジナルです。ただ、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)が歌ったことからジャズの曲として認識している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
参考:『Amazon | Ella Wishes You Swinging Christmas | Ella Fitzgerald | クリスマス | 音楽』
現代でもポップス・アレンジとジャズ・アレンジのいずれもよく耳にします。
典型的な32小節AABA形式の曲で、初心者の方でもとっつきやすいと思います。コードもさほど難しいものはありませんが、適度に頻繁なコードチェンジ(おおむね1小節に2つのコード)で書かれている譜面が多いでしょう。ミディアムかもしくはもう少し早めのテンポで明るく演奏すれば楽しいこと間違いなしです。なお、オリジナルを元にしたエンディングのフレーズが書かれている譜面も多いですが、これをそのまま演奏するとジャズよりもポップス感が強くでるので、エンディングをジャズ的なものに変えるのも一つの手です。
Have Yourself a Merry Little Christmas(ハヴ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス)
この曲は特にジャズでよく演奏されるのではないでしょうか。フランク・シナトラ(Frank Sinatra)やエラ・フィッツジェラルドもこの曲の録音を遺しています。『黒本』に載っていないのがむしろ不思議ですね。
参考:『Amazon | クリスマス・アルバム | フランク・シナトラ | クリスマス | 音楽』
参考:『Amazon | Ella Wishes You Swinging Christmas | Ella Fitzgerald | クリスマス | 音楽』
曲の構成はAABA’形式で、コーラス最後のA’が12小節なので、合計36小節の曲です。1-6-2-5のコードで始まり、ジャズ・スタンダードにありがちなコード進行が各所にちりばめられながらも、適度に跳躍があるメロディー、前述の36小節という小節数等も相俟って、意外と弾き飽きない曲であり、また初心者の方の練習曲としても最適でしょう。テンポはバラードからミディアム・アップ・テンポまで対応できますので、そういう意味でも長く楽しめる曲です。
Joy to the World(もろびとこぞりて)
日本では「もろびとこぞりて」の歌詞が付いて有名になった賛美歌です。ジャズ・スタンダードでもポップス曲でもない賛美歌ですし、Aパートが8小節(譜面によっては7小節)、Bパート12小節という構成はなかなかジャズでは見られないので、上述の2曲に比べるとジャズのセッション等で演奏しようとすることはだいぶ少ないのではないかと思います。ジャズ・ミュージシャンではナット・キング・コール(Nat King Cole)、エラ・フィッツジェラルドらも歌っていますが、やはりジャズというよりはクラシカルなアレンジであったりする場合が多いですね。
参考:『Amazon | Merry Christmas | Nat 'King' Cole | イージーリスニング | 音楽』
参考:『Amazon | Ella Fitzgerald's Christmas | Ella Fitzgerald | ビッグバンド | 音楽』
ただ、メロディーはみんな非常によく知っている曲ですので、ジャズでない曲をあえてジャズで演奏する題材としてはなかなか興味深いのではないでしょうか。
Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!(レット・イット・スノー)
1945年にヴォーン・モンロー(Vaughn Monroe)が録音しヒットした曲で、現代でもクリスマス・シーズンにはいたるところで耳にします。こちらもエラ・フィッツジェラルドやフランク・シナトラらジャズ・ミュージシャンが歌っているので皆さんも聴いたことがあるのではないでしょうか。それにしても、エラさんやシナトラさんは大抵のクリスマス・ソングを歌ってますね(笑)! ちなみにこの曲のタイトルは「雪よ降れ」という意味ですが、日本の童謡の「雪」(「雪やこんこ」という歌詞の歌)といい、洋の東西を問わず雪は降るとテンションが上がるものなのでしょうか(笑)。
参考:『Amazon | Ella Wishes You Swinging Christmas | Ella Fitzgerald | クリスマス | 音楽』
曲構成は典型的な32小節AABA形式、インストでもヴォーカルでも、ジャズ・プレイヤーにはこの上なく慣れた形式です。コードも難しいものは使わずにできますし、セッションでいきなりやっても問題は無いでしょう。何よりメロディーが明るく軽快ですので、みんなで演奏して楽しくならないはずがありません。
Santa Claus Is Comin’ to Town(サンタが街にやってくる)
この曲はどちらかというと童謡や唱歌のような感じで憶えている人が多いのではないでしょうか。小学生の頃に歌ったり演奏したという方も多いでしょう。そんな曲をジャズでできるの? と思われるかもしれませんが、だいじょうぶ、ビル・エヴァンス(Bill Evans)だってやってます。
参考:『Amazon | トリオ’64 | ビル・エヴァンス, ビル・エバンス・トリオ | モダンジャズ | 音楽』
こちらも「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」と同じく典型的な32小節AABA形式というジャズによくある曲構成。とはいえ童謡や唱歌として馴染んだ曲を何も考えずそのままやってしまうとあまりジャズっぽくならないかもしれません。譜面によってはトライアドばかりでコードが付けられていたりもしますので、セッションでやるならジャズ的なセブンス・コードでコードが付けられているものを用いた方がよいでしょう。テーマ・メロディーを弾く時も、譜面の音符をそのまま弾いたりあるいはリズムがはねすぎたりすると童謡感が強く出すぎてしまうので、メロディー・フェイクとスウィングの度合いに気をつけましょう。
まとめ
今回は『黒本』には収録されていないクリスマス・ソングを5曲ご紹介しました。『黒本』未収録とはいえ、皆さん馴染みのある曲ばかりだったのではないでしょうか。『黒本』には載っていない分セッションでコールされる率は少し下がりますが、知名度が高くジャズで対応しやすい形式の曲が多い上に楽しげな曲調のものばかりですので、セッションで演奏しても歓迎されやすいでしょう。是非今年のクリスマス・シーズンはセッションでもクリスマス・ソングで盛り上がりましょう!
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