【用語解説】置き楽器
- 2018.12.08
- 用語解説
置き楽器【おきがっき】[名詞]
セッション会場となる店やスタジオ等に備品として常設され、客が借りて使用することができる楽器。
「こちらのお店には―のベースはありますか?」「このギターは―ではなく、お客さんの物です」
解説
一口に楽器と言ってもその大きさは様々であり、持ち運びやすさはそれぞれの楽器によって大きく異なる。ギターやサックス、トランペット等の奏者はたいてい自分の楽器を持ってセッションやライブに行くが、ピアノやドラムとなるとセッションやライブのたびにそれらを持ってゆくのは大変だ。そこで、会場となる店に設置されている置き楽器を借りて演奏することになる。もちろん大規模な会場で催されるJ-POP等のメジャー・アーティストのライブであればドラムやピアノもプレイヤー自身のものを持ち込んで使用することはよくあるが、そうではないジャズ・クラブ等の規模のライブであれば一流のジャズ・ミュージシャンもその店にある置き楽器を利用することは多々ある。
このサイトを読んでいるジャムセッションに興味がある方々に身近な話としては、セッションが行われている店に置き楽器があれば自分の楽器をわざわざ持ってゆかなくても手ぶらでセッションに参加できる。実際にセッションが行われているような店にある置き楽器としてどんな例があるかを、以下に楽器別に解説する。
ドラムの場合
まずドラムに関しては、ジャムセッション参加者が自身の楽器を持ち込むということは——たとえそれがシンバルやスネアだけであっても——まず無いだろう。たいていドラマーは自分のスティック類だけを持ってセッションに参加する。ドラムが設置されていない店でのセッションであればホスト・プレイヤーが自前のドラムセットを持ってくることはたまにあるが、一般参加者のドラマーがドラムセットを持ってくるということは——主催者側に余程お願いされて、等といった事情でもなければ——少なくとも筆者は見たことが無い。セッションがよく行われるような店では多くの店に置き楽器としてのドラムセットがあるので、色々な楽器の奏者の中でもドラマーはセッションに最も身軽に行ける分類に入るだろう。ただ、ドラムセットが無い店のセッションには参加すること自体できないという点では残念である。
ピアノの場合
次にピアノに関してだが、こちらもジャムセッションが行われているような店には置かれていることが多い。アコースティック・ピアノかエレキ・ピアノかを問わなければ、設置されている可能性はドラムセットよりも高いかもしれない。そういった意味で、スティック類を持ってセッションに参加するドラマー以上に、ピアニストこそが最も身軽にセッションに行ける楽器奏者であるかもしれない。ただし、店によって置かれているピアノは様々で、アコースティック・ピアノが無くエレキ・ピアノしかない(あるいは場合によってはピアノ・タッチではないキーボードしかない)場合もあるし、アコースティックであってもグランド・ピアノである場合もあれば、アップライト・ピアノである場合もある。鍵盤の数も少ないものであることもあるし、アコースティック・ピアノの場合は調律が良くないこともある。従って、ピアニストはセッションに身軽には行ける利点がある一方、店の置き楽器の質をどうしても受け入れざるを得ない。また、ドラマーと同じく置き楽器が無い店のセッションには参加することができない。ただ、ドラムの場合に比べては楽器(といっても持ち運び可能なキーボードにはなるが)を持ち込みもしやすいだろう。
ギターの場合
プレーヤー自身が楽器を持ち運ぶことができる割に意外と置き楽器があることが多いのがギターである。これは、セッションをしている店の店主がギターを弾く人であったりすることも多いし、1本や2本置いていてもそれほど場所を取らないからでもあるからだろう。それもあってか、ギタリストは楽器を持たずに店に飲みに来て、そこでセッションがあれば置き楽器のギターを借りて軽く何曲か弾いてみるというような気軽な参加の仕方が好きだという人もいる。
ベースの場合
ベースについては、エレキ・ベースであれば1本ぐらいお店に置かれていることも多い。これもギターと同じであまり場所をとらないからだろう。ただ、アップライト・ベース(コントラバス)に関しては、置き楽器として店にあることは多いとは言えない。やはり場所をとるからであろう。アップライト・ベースは奏者自身が持ち運ぶことが多い割にその移動は大変なので、置き楽器があると重宝される。セッションの場合は、セッション・ホストにベーシストがいればその人の楽器を参加者も使わせてもらうことが多い。
管楽器の場合
サックスやトランペットといった管楽器についてはほとんどの奏者が自前の楽器を持ってセッションに参加するので置き楽器に関しては気にすることは少ないが、たまに置き楽器としてのサックスやトランペットがある店もある。ただ、それらの楽器を使わせてもらう場合でも、マウスピースやリードは自分のものを持ってゆく方がよいだろう。
その他の機材
楽器という範疇からは少し逸れるが、店にあるギター・アンプやベース・アンプ、マイク、PA機器等の機材も広い意味では置き楽器と捉えることができるかもしれない。これらはセッションやライブを日常的に行なっている店にはたいていあるが、そういったイベントを日常的にしているのではない店では無かったりもするし、あるいはあっても故障していることもあるので、特にエレキ・ギターやエレキ・ベースを使う参加者、そしてヴォーカリストは参加前にお店に確認しておいた方がよいだろう。
補足
いずれの楽器の場合でも、置き楽器はセッション会場となる店等の大切な備品である。それらを使う場合は店主に「楽器をお借りしていいですか」と一声かけ、慎重に扱うことを心がけるようにしたいものである。また、置き楽器がお店のものではなく常連の客やホストのものであるということもある。客やホストが店に楽器を置かせてもらうかわりに他の客にも使ってもらうようにしているというケースである。この場合も、その楽器の持ち主に敬意を払って借りるようにしたい。なお、置き楽器といっても常連客が自分自身が使うためだけに店に許可を得て楽器を置かせてもらっているものを指すこともあるので、そういう「置き楽器」は他の客は使ってはいけないのは言うまでもない。
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